離婚するときに、住宅ローンの連帯保証人(れんたいほしょうにん)になったままだと、住宅ローンの名義人が支払いを滞らせた場合、離婚後であっても代わりに返済しなければなりません。
こちらでは、住宅ローンの連帯保証人とはどのようなものなのか、そして離婚で連帯保証人から外れる3つの方法についてわかりやすく説明します。
- 住宅ローンの組み方は、単独名義、連帯債務、連帯保証人、ペアローンの4つがあり、単独名義以外で夫婦がローンを組んでいる場合、離婚後、両方にローン返済義務がある
- 離婚をしても連帯保証人や連帯債務の責任がなくなるわけではない
- 離婚で連帯保証人から外れる方法は、連帯保証人の差し替え、住宅ローンの借り換え、家を売却するの3つ
- この記事はこんな人におすすめ!
- 住宅ローンの名義人や連帯保証人になっているまま、離婚を考えている人
- 離婚の際に、住宅ローンの連帯保証人から外れる方法を知りたい人
- 離婚をするとき、住宅ローンが残っている家をどうしたらいいかわからない人
もくじ
1.住宅ローンと連帯保証人との関係について
まず、住宅ローンと連帯保証人の関係について確認しておきましょう。
夫婦が住宅ローンを組む際の名義と保証人との関係には、次の4つのパターンがあります。
- 単独名義
- 連帯債務
- 連帯保証人
- ペアローン
それぞれのローンの組み方について説明します。
1-1.単独名義(たんどくめいぎ)
夫か妻、どちらかが単独名義でローンを組む方法です。
一人だけで十分な信用力(収入)があり、金融機関(銀行)が了承すれば、単独で住宅ローンを利用できます。
このローンの組み方だと、連帯保証人は関係ありません。
1-2.連帯債務(れんたいさいむ)
夫と妻が、連帯債務者になる場合です。
連帯債務とは、1つの住宅ローンの借入契約において、債務者(借りる人)が複数人いる形になります。
連帯債務にすると、夫と妻の収入を合わせて審査をしてもらえるので、単独で住宅ローンを組むよりも借入金額を増やすことができる点がメリットです。
それぞれの債務者が住宅ローン全額の負債支払義務を負い、どちらがどれだけの分を負担するという負担割合はありません。
つまり、どちらかが支払えなくなっった場合には、残りの1人が全額返済を求められます。
また、債権者(銀行など貸した側)から返済の請求を受けたとき「もう1人の債務者(夫か妻)に対して、先に支払い請求をしてほしい」という主張をすることも認められず、いずれの債務者も、債権者から請求を受けたら全額の支払いに応じなければなりません。
債権者には対抗できませんが、連帯債務者(夫と妻)の間ではそれぞれの負担部分があるので、それを超える部分について、もう一方の連帯債務者にお金の返還請求できます。
たとえば、夫婦で連帯債務者となり、夫の負担部分が60%、妻の負担部分が40%だとします。もし妻がローンの全額を返済したら、後で夫に40%を超えた分のお金を請求することが可能です。
1-3.連帯保証(れんたいほしょう)
ローンの名義人とは別に、連帯保証人を立ててローンを組む方法です。
夫婦のどちらかの単独名義で借入をして、もう片方が「連帯保証人」となって支払いを保証する形になります。
連帯債務と違い、ローンの名義人である主債務者は1人です。
ただし、もう片方がその支払いを保証しているので、主債務者が支払いをしない場合には、連帯保証人が返済をしなければなりません。
連帯保証人は「負担部分」がない点において、連帯債務とは異なります。もともと保証しているだけで自分が借り入れたわけではないからです。
そのため、債権者の求めに応じて連帯保証人が住宅ローンの全額を支払った場合、主債務者に対して支払った全額の返還を求めることができます。
連帯保証人については、後ほど詳しく説明します。
1-4.ペアローン
夫婦それぞれが別のローンを組む方法です。
ペアローンとは、1つの家に対して2人で2本のローンを組む形式で、ペアとなった2人は互いの連帯保証人となります。
同居親族のみペアとなれますが、原則夫婦か親子です。2本の住宅ローンであるため、2人とも団体信用生命保険に加入できたり、住宅ローン控除を利用することができます。
2.連帯保証人とは
連帯保証人とは「保証人」の一種です。
保証人とは、主債務者(借入名義人、住宅ローンを借りた本人)がローンを支払わないときに代わりに返済しなければならない義務を負う人を指します。
連帯保証人は、連帯保証以外の保証人に与えられている一部の権利が制限されているため、特に厳しい義務が課されている保証人です。
まず、連帯保証人にはどのような義務があるのかを確認しておきましょう。
2-1.催告の抗弁権がない
催告の抗弁権とは、債権者(銀行などのお金を貸している側)に対して、「まず主債務者(住宅ローンを借りた本人)に請求するべきである」と請求できる権利のことです。
連帯保証人は、本人がどうしても支払わなかったときに初めて責任が生じると勘違いされることが多いですが、法律上、極端に言えば、本人に請求するより先に連帯保証人へ請求してもかまわないことになっています。
万が一、連帯保証人が債権者(銀行などのお金を貸している側)から「お金を返して欲しい」と請求を受けた場合は「先に夫に請求してほしい」とか「先に夫の財産を差し押さえてほしい」と主張する権利がありません。
2-2.検索の抗弁権がない
検索の抗弁権とは、「主債務者(住宅ローンを借りた本人)には取立てが容易な財産がある」と立証した場合、債権者(銀行などのお金を貸している側)は先にその主債務者から取立てをしなければならないということです。
しかし、連帯保証人には「夫に支払える経済力も財産もあるので、そちらへ先に請求してください」という主張はできません。
2-3.分別の利益がない
分別の利益とは、保証人の数に応じて分割された額になることです。
つまり、分別の利益がないということは「私の負担部分は半分だけだから、残りの半分は夫に請求してほしい」など、負担割合についての主張をすることも許されません。
主債務者(住宅ローンを借りた本人)である夫が住宅ローンの支払いを滞らせると、とたんに「全額の一括返済」を要求され、拒むことができないという重い責任を連帯保証人である妻が負っています。
離婚するとき、たとえば妻が夫の住宅ローンの連帯保証人になっていたら、離婚後もこのような重い責任を背負い続けることになります。
夫が離婚後に住宅ローンを払わなくなったら、妻が代わりに一括払いしなければなりませんし、妻も支払うことができなかったら自己破産することになりかねません。
4.離婚の際は、連帯保証人や連帯債務を抜けるべき理由
もしも夫妻が連帯債務人になったままや連帯債務のまま離婚をしてしまったら、どのようなリスクがあるのでしょうか。
この場合、離婚をしていても、ローンの完済まで連帯保証人や連帯債務人が、ローンの支払い義務を負うことになります。
ローンが返済されなければ、金融機関によって家は競売(けいばい・きょうばい)にかけて売り払われてしまい、売却代金を住宅ローンの返済に充てられるため、住み続けることはできません。
さらに、競売での売却代金だけでは住宅ローンの完済に足りない場合、金融機関は不足分を請求してきます。
このように、連帯債務者や連帯保証人である以上は、離婚後もずっと支払義務を負い続けなければならず、さらに、競売にかかって家がなくなっても残ったローンを支払わないといけません。
したがって、離婚のときは、連帯保証人や連帯債務から抜けておくべきです。
4-1.相手が住宅ローンを全額を支払うと約束したら?
離婚後に、相手が「住宅ローンの全額を支払う」という約束をしている場合であっても、連帯保証人であるなら責任からは逃れられません。
なぜなら、夫婦間の約束を金融機関に主張することは認められないからです。
「離婚」という夫婦の個別の事情によって、金融機関が住宅ローンを回収できないという危険を負うことはできません。
夫婦間の約束事として、離婚時にどちらかが「住宅ローンを支払う」という取り決めをすることは可能です。
しかし、それはあくまで夫婦間の話であり、支払いが滞った場合、金融機関は連帯債務者や連帯保証人にも請求してきます。
5.離婚で連帯保証人から外れる3つの方法
離婚時に妻が連帯保証人を外れるには、次の3つの方法があります。
- 連帯保証人の差し替え
- 住宅ローンの借り換え
- 家を売却する
5-1.①連帯保証人の差し替え
「連帯保証人の差し替え」とは、別の誰かを連帯保証人にすることにより、連帯保証人から外してもらう方法です。
一般的に、銀行などの金融機関は、1人だけの収入では不安があるため、収入のある人を連帯保証人にしています。
その場合、何の保証もないまま連帯保証人が外れてしまうと、不払いが発生したとき、金融機関が不利益を受けてしまうため、連帯保証人から外れることを認めてくれません。
そこで、連帯保証人を外れるには、今の連帯保証人と同じかそれ以上に信用のある別の人を連帯保証人にする必要があります。
もしくは、人でなくても土地や建物などの物的担保(ぶってきたんぽ)を入れることにより、連帯保証にする方法もあります。
ただし、連帯保証人の差し替えや物的担保の差し入れによって連逮捕常任から外れることができるかどうかは、お金を貸している側である金融機関の了承が必須です。
たとえ、今の連帯保証人よりも収入の多い人を紹介しても、金融機関が納得しなければ差し替えは認められず、連帯保証人を抜けることはできません。
5-2.②住宅ローンの借り換え
2つめは、住宅ローンの借り換えという方法です。
たとえば、夫がメインの主債務者(住宅ローンを借りた本人)で、妻が連帯保証人という形で住宅ローンを組んでいるとします。この場合、まず夫が別の金融機関(銀行)で住宅ローンを組み直すことにより、現在のローンを完済します。
そして、次のローンは夫が単独で借りて、妻が連帯保証人にならなければ、現在の住宅ローンを完済した段階で妻が連帯保証人から外れることができます。
ただし、住宅ローンの借り換えをするには、夫が新たな住宅ローンの審査に単独で通過することが必要です。
現状、夫と妻との収入を合わせて、ぎりぎりでローンを組んでいる場合、次のローンでは妻の収入を合算できないので、審査に通らないケースも多く見受けられます。
5-3.③家を売却する
3つめの方法は、家を売却することです。
連帯保証人の差し替えも住宅ローンの借り換えもできず、連帯保証人から外れることができなかった場合、将来ローンを組んでいる人が滞納すると、連帯保証人に請求が及びます。
元旦那が住宅ローンを払わなくなり、連絡が取れず、連帯保証人として銀行に呼び出されてしまいました…
今後どのようにしたらよいのでしょうか…
こちらはイクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
このように、離婚後にローンを支払ってくれなくなったというケースも多いです。
もし、連帯保証人も支払えなければ、債権者(銀行などのお金を貸している側)はローンのお金を回収するために家を強制的に売却(競売:けいばい)します。
こうした事情から、離婚の際に家を売却する方法を選択されるケースも多いです。
ただし、住宅ローンが残っている場合、家の売却額でローンを完済できるアンダーローンか、ローンを完済できないオーバーローンかで売却の進め方が少し違ってきます。
それぞれの方法を確認してみましょう。
5-3-1.アンダーローンの場合は、通常の売却
アンダーローンとは、残っている住宅ローンの残債(残高)が家の売却価格を下回っている状態のことです。
この場合、不動産会社に家の売却を依頼して、家が売れればそのお金で住宅ローンを完済することができます。
そうなれば、連帯保証人としての責任も当然なくなりますし、売却代金からローンを支払った残りの金額は、夫婦で分け合うことも可能です。
5-3-2.オーバーローンの場合は、任意売却
オーバーローンの場合は少し注意が必要です。
オーバーローンとは、残っている住宅ローンの残債(残高)が家の売却価格を上回っている状態のことです。
この場合、家を売却したお金で住宅ローンを完済することができません。
そのため、金融機関の了承をとってから「任意売却(にんいばいきゃく)」という方法で家を売却することになります。
実際に任意売却する際は、不動産会社が債権者(銀行などのお金を貸している側)と債務者(住宅ローンを借りた本人)との間に入って交渉を進めてくれます。
ただし、家の売却を具体的に進めることができるのは、家の所有名義人のみです。つまり、夫が家の所有名義人であれば、夫の同意がなければ売却を進めることができません。
また、任意売却で得た売却代金は、売却にかかる諸経費を差し引いた残りは全額住宅ローンの返済に充てられます。
それでも住宅ローンが残ってしまうので、実質、連帯保証人から抜けるということにはなりません。
ただこのとき、「残ったローンを夫が全額支払う」という約束をしておけば、妻は支払いをしないで済みます。
離婚時に残る住宅ローンの考え方については「離婚時、家の残債(住宅ローン)は折半しないといけないのか?」も併せてご覧ください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 住宅ローンの組み方には、次の4つの種類がある
・単独名義
・連帯債務
・連帯保証人
・ペアローン - 単独名義以外で夫婦がローンを組んでいる場合、離婚後、両方にローン返済義務が残る
- 離婚をしても連帯保証人や連帯債務の責任がなくなるわけではないため、離婚したら連帯保証人から抜けるべき
- 離婚で連帯保証人から外れる方法は、次の3つ
・連帯保証人を差し替える
・住宅ローンを借り換える
・家を売却する - 家の売却代金でローンが完済できないオーバーローンの場合は、金融機関の承諾を得て、任意売却することになる
夫が名義人の住宅ローンで妻が連帯保証人になっている場合、もし夫がローンの支払いを止めてしまったら、妻に支払い請求が来ることになります。
このような何十年も続く連帯保証人としての関係を続けるよりは、離婚をした段階で、任意売却するなどして少しでもローンの返済額を減らしておくことのほうが、妻のリスクは少なくて済むと言えるでしょう。
しかし、任意売却は金融機関との交渉と売却活動できるタイムリミットがあるため、不動産会社にとってむずかしい売却方法です。
任意売却は、一歩間違うと「競売」になる可能性があるので、依頼する不動産会社を間違えると取り返しのつかないことになってしまいます。
必ず任意売却の経験が豊富な不動産会社に依頼するようにしましょう。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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